2008年10月27日

何を外部委託するか

 『〜前略〜報告書は、従来の日本型経営モデルは年功序列と終身雇用制による「なんでも自前主義」で、長期的視点で研究開発投資や人材育成ができるよさがあったと指摘。新しい日本型経営モデルは、支援サービスを活用することで経営資源を中核事業に集中して競争力を向上させる一方、旧来型のよさをうまく温存しており、「今後の日本経済をけん引する可能性を秘めている」と分析している』

 上の記事は、経済産業省の「ビジネス支援サービス活性化研究会」が日米企業七十社から聞き取り調査をしてまとめた報告書について報じたものです。
今まで、企業と学校はともに人が集まり業務を遂行する組織体ではあるものの、全く共通性のないものとして認識されてきました。しかし、近年、学校教育においても「経営」ということが重視されてきています。東京都教育委員会では、都立校に経営バランスシートを作成させて、校長や教員にコスト意識をもたせるようにしています。先に取り上げた教職大学院でも学校経営を重視しています。そして、学校においても企業と同じように外部の「支援サービス」(外部委託)の活用が図られるようになってきました。今回は、学校における外部委託の在り方について考えていることを述べることにします。
学校で働いている人というと教員と事務・給食・用務・警備などの仕事をする主事を思い浮かべる人が少なくないと思います。しかし、現在の公立小中学校は、もっと多くの人によって運営されているのです。東京都の状況を見てみると、警備の仕事が機械警備の導入によって警備会社に委託されたり、給食調理が民間調理会社に委託されたりしている学校が少なくありません。臨床心理士の資格をもつスクールカウンセラーを配置し、独自の予算で、教員免許をもつ人を少人数指導の講師として採用している自治体もあります。また、情報教育の充実のために、パソコンインターネットなどについて専門的な知識をもつ人を情報アドバイザーとして配置している自治体もあります。大学生がボランティアとして部活や補習授業の指導に当たり、図書館補助員として人材派遣会社から司書資格をもつ人が派遣されている自治体もあります。さらに、「総合的な学習の時間」の導入に伴いゲストティーチャーという名称で地域の人が教員と組んで授業をしたり、学力低下対策として長期休業中に補充教室で勉強を教えたりするケースもあります。小学校における英語教育が注目される中、教員資格をもたない英語を母語とする外国人が「英語の先生」として小学校で授業をすることも珍しくありません。そして、学校評議員等の名称で地域住民が学校運営について意見を言う制度はほとんどすべての学校で導入されています。つまり、従来学校の外部にあった人材を学校教育で活用していくという動きが起こっているのです。これは、企業における「支援サービス」の活用と同じ動きです。
こうした背景には、学校教育の内容が多様化しそれぞれの分野の専門家の協力が必要になっていること、厳しい財政状況の中でコストの削減が必要なことがあります。この点も企業と共通している面があり、企業における「支援サービス」活用の考え方が学校においても有効なのではないかと考えることができると思います。
記事では、新しい経営モデルは、経営資源を中核事業に集中することによって(中核事業以外の分野で支援サービスを活用する)、長期的視点で研究開発投資や人材育成ができるという旧来型経営のよさも残すという形であると分析しています。このことを学校に当てはめてみると、教育という中核事業に経営資源を集中させ、それ以外の分野において支援サービスを活用する、すなわち外部委託を進めていくということになります。経営資源といえば金と人です。しかし、学校においては、予算の重点配分は始まったばかりであり、主たる経営資源とは人材ということになります。そうした視点で現在の学校の状況をみてみると、教育活動に直接のかかわりが薄い警備や給食調理の分野において民間企業等への委託が進んでいることは的を射た措置であるといえます。しかし、教育活動、特に授業への支援サービス導入については慎重である必要があります。
 記事では、従来の「何でも自前主義」は非効率的な面もありますが、研究開発や人材育成の面で優れた面があるとしています。学校においても、様々な指導法の開発や教材の開発などは、教員がよりよい授業をしようとして試行錯誤する中から生み出されてきました。また、そうした試行錯誤の中から優れた授業力をもつ教員が育ってきました。学校における中核事業である授業において、外部の支援サービスを過度に導入した結果、こうしたよさが失われてしまう危険性を考慮する必要があると思います。
 もちろん、支援サービスの活用は時代の流れであり必要なものですが、授業を担うのは教員であるという原則を確認しておく必要があります。昨年、ある自治体が「総合的な学習の時間」の計画作りを民間企業に依頼するという方針を立てたことが報道されました。この自治体の学校の教員は、「総合的な学習の時間」について指導計画を作成する経験をしないまま、指導計画を作る能力を低下させていくことになってしまう危険性があります。私自身、市議会で「環境教育についての指導計画作りをNPO団体に委託してはどうか」と質問を受けたことがあります。子どもの実態、学校全体の教育活動、学習指導要領について十分な理解をしている教員でなければ充実した指導計画は作成できないと答弁しましたが、本意は、委託を行った場合、長期的にみて教員の授業力が低下していくことが考えられるというものでした。単に、ある単元の指導計画を作成するだけならば、外部の支援サービスを活用した方がよいものができる場合もあり得ますが、そのことによって教員の授業力が低下してしまったのでは、損失の方が大きいと思います。
 長期的な視野で教員という人材の育成を考えていくことこそが必要であり、授業における支援サービスの活用は、教員主導の形で行うことが大切であると思います。





posted by motosuginorio at 08:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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